Rahsaan Roland Kirk / Prepare Thyself To Deal With A Miracle

Hi-Fi-Record2012-08-06

(ラサーン)ローランド・カークが好きで
家にも結構な数のアルバムがあります。


どの時代のアルバムもそれぞれに好きなところがありますが
やっぱり今でもときどき針を乗せるのは
60年代末から70年代前半のアトランティック時代。


この時代のカークの音楽は
彼自身がみた夢の世界と通じているようなところがあり、
その夢の世界の混沌が
ぼくらも人生のどこかで体験したことのあるような親しみを与えてくれるせいか
ノイジーともフリーキーともそれほど感じないのです。


たしか、後年に彼が名乗った「ラサーン」も
夢のなかで彼を呼ぶ声だったと思います。


カークの場合
その夢は
けっしてうつくしいお花畑でのお遊びや
楽しいジェットコースターのようなものだけでなく
めちゃくちゃにさびしくてかなしいものや
奈落にまっさかさまに落ちるようなこわさのあるものだったりもするのです。


そしてもうひとつ重要なことがあります。


盲目の鬼才と呼ばれるカークですが
たぶん
彼は夢のなかでは
世界が鮮やかにみえていたのではないでしょうか。


だから
どんなにさびしくても
こわくても
彼は夢のなかで目をあけていたと思います。


世界をこの目でみたいから。


そして
そこでみたものが
この時代のカークの作品になっていると思います。


目でみえるものや
耳できこえるものに追われすぎて
自分の裡側にある世界をみるために目をつむる
夢のなかに落っこちてみるという方法を
あやうく忘れてしまいそうなときには
ぼくはカークの音楽をきくことにします。


できれば
めちゃくちゃおおきな音で。(松永良平