Maria Dallas マリア・ダラス / Tumblin’ Down

Hi-Fi-Record2012-09-01

シアトルのレーベル、Light In The Atticから出たばかりの
「Country Funk 1969-1975」というオムニバス盤を
お客さんから教えていただきました。


収録曲を見せていただいたら、
それってつまり、
日本でいうビートの跳ねたスワンプ・ロックの
アメリカ的解釈だったのでした。


考えてみれば
アメリカ人が「スワンプ・ロック」という表現を口にするのを
ほとんどきいたことがありません。


気になったので英語のwikipediaで検索してみたら
なんと「スワンプ・ロック」ではなく
引っかかったのは「スワンプ・ポップ」のほうでした。


50年代から60年代前半にかけて
南部のテキサスやルイジアナで生まれた
粘着味があってテックスメックス風だったり
R&Bスタイルだったりするポップ・ミュージックを
アメリカでは「スワンプ・ポップ」と言っていたのだそうです。


そして「スワンプ・ロック」は
その「ポップ」が60年代末以降に「ロック」化したものだという解釈でした。


そして今
現実にアメリカで買い付けをしていて
「スワンプ・ロック」という英語表現をするアメリカ人に会ったという記憶はありません。
きっと現代のアメリカ人の感覚には
「カントリー・ファンク」と表現したほうが音のニュアンスが伝わるのでしょう。


そういう意味でいうと
日本でいう「ソフトロック(バブルガムも含む)」は
アメリカでは「サンシャイン・ポップ」だし、
日本でいう「70年代AOR」は
アメリカでは最近は「ヨット・ロック」と言われるケースが多いのです。


言い換えによって
あたらしい風を古いものに吹かす。
それって一時期は日本の得意技だったんですけど、
最近はあんまりできてないような気がしますね。


ところで
そういううまい言葉を使って再生できないかと
最近個人的に思ってるのは
60年代ナッシュヴィルのお嬢ちゃんカントリー・シンガーたちの作品です。


スキーター・デイヴィス、ロレッタ・リン、ドリー・パートン(若いころの)……、
そしてつい最近仕入れたばかりの、このマリア・ダラスも
鼻にかかった声の甘さと
タフにスイングするナッシュヴィル・カントリー・サウンドが最高なのです。


アルトマンの映画「ナッシュヴィル」をスクリーンで見たせいですかね?
それとも
シー&ヒムのズーイー・デシャネルのせいですかね?


いいオムニバスがあったら買いますよ。


そしてそのときは
すとんと腑に落ちるいい呼び名、求む!(松永良平