Ray Connniff レイ・コニフ / Somewhere My Love

Hi-Fi-Record2007-02-13

美女ジャケ。
アメリカでは
“チーズケーキ・カヴァー(chease cake cover)”という表現をする。
さらに転じて“チージー・リスニング(cheasy listening)”
なんて悪のりの仕切り板を見かけることも。


日本では美女と言えば”甘い”んだけど、
アメリカでは“酸っぱい”のか?
いやいや、チーズがとろけるさまを指しているのだ。
心が熱くなって、とろけてしまうの。


イージー・リスニングのレコードを売るために
トップモデルをジャケットにあしらう。
そうした文化は、
アルバム・ジャケットという概念が登場した
1950年代初頭からすでに始まっている。


買付をしていると、中身は別としても、
美女に見とれて思わずアルバムを手に取ってしまうことがある。


中身を試聴してみて、クビを強く振る。
うーん、こりゃ売れそうもない。


しかし、よくよく考えてみれば、
ジャケが美しいという理由だけで売れるかもしれないのだ。
アメリカのレコード店に“チーズケーキ”のコーナーがあるのは
そういう理由に他ならない。
下心だって、立派な購買理由なのである。


「いやいや、さすがにこれは」などと躊躇していたら、
「この野郎、堅物ぶりやがって」と
ジャケットの美女がぬっと抜け出て、
ぼくの頭をこづくかもしれない。


そんな妄想が浮かぶのは
昔「ボッカチオ'70」というオムニバス映画で
フェリーニが監督したパートを見たせいだろう。


美女の看板をわいせつだと抗議する堅物の先生が、
ある夜、看板から抜け出した巨大な美女に襲われる。
その美女はフェリーニお気に入りのグラマー女優
アニタ・エグバーグが演じていた。


レイ・コニフのアルバムの美女が出て来てくれるんなら、
ぼくもふるって抗議しよう。
現実には美女は出て来ないが、
美しい音が出てきます。(松永良平


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