The Five Du-Tones / Shake A Tail Feather / Divorce Court

Hi-Fi-Record2011-06-01


 折りをみてはクライヴ・デイヴィス著「アメリカ、レコード界の内幕」を読む。いかにも暴露場話風のスキャンダラスな匂いがするタイトルが気に入らないが、読返す度に面白い本だ。


 クライヴ・デイヴィスは、アメリカのレコード界のドン。ロックの殿堂入りをしているレコード会社社長だ。それも複数のレコード会社を、経営して来た。最初にレコード会社と関わったのは、彼が1956年に大学のロー・スクールを出て1年ほどしてのこと。弁護士としてコロムビア・レコードの仕事に就いたときだった。


 全篇にわたって、繰り返しビジネスという言葉が登場する。アーチストの音楽的な特質の話をしたかと思うと、次のページではすぐに契約の話になる。
 なるほどアーチストと音楽を、アートの側から見ているだけでは、音楽ビジネスの全体像が見えないのだなと思い知らされると同時に、ここに書かれたことは、はたして本当なのだろうか?との思いも残る。
 コロムビアからファースト・アルバムをリリースしたばかりのボブ・ディランが、未成年時の契約だったからという理由で、契約破棄を申し出る手紙を送って来て、プロデューサーのジョン・ハモンドがひどくうろたえたといったエピソードを読むと、そうした疑問が頭を持ち上げる。


 しかしその表裏の無い確実な文章につきあいながら全体を読み進めるうちに、なんとく抱いていた疑わしさも、どうも確からしい、いや信ずべきことなのだとの思いに変わっていく。数字の持つリアリティ(ボブ・ディランの初期アルバムがいかに売れなかったかなどのエピソードが多数ある)にも、うなずかざるを得ないものがある。
 要するに読返す度に、信ずべき本なのだという思いを強くすることになるのだ。
 契約のこと、法律のことなどに理解が進み、今一度、読返すと、また思いもかけぬ発見に巡り会うのである。

 
 このシングルのB面は、離婚法廷の様子を写し込んだドラマ仕立てのもの。
 妻役をメンバーの裏声で表現したり。気がつくと、冒頭のリズムは、開廷の合図だったり。
 「金を渡さないのよ」などと妻が叫び、判事が「いや、まてまて」と、とりなしたり。
 この面白さは、全体を聴かないとわからないだろうな。


 もちろんこのシングル、クライヴ・デイヴィスの話とは、なんの関係もありません。(大江田信)


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