Patti Page パティ・ペイジ / I Wished On The Moon

Hi-Fi-Record2009-07-23

 Google Earth を使って月面を探索できることになったとして、ネットや新聞に月面写真が掲載されている。Google Earthのページに行けば、アポロ飛行士が月面を歩く映像も観ることが出来るし、簡潔にまとめられたビデオでGoogle Earthの使い方を知ることも出来る。6月に月に落下した日本の衛星「かぐや」(SELENE)の観測データが提供されたというのが、なんだか少し嬉しい気もする。


 こうして月面の映像を身近に目前に見たい時に見ることが出来るなんて、想像もしていなかったし、確かに凄いことなのだろうが、ぼくの気分はどうも今ひとつ盛り上がらない。
 たぶんそれというのも、月というものに対してロマンチックな気持ちの方が強いからだろう。無理してお化粧を剥がすことも無いでしょうにと、どこかで思っている。駅からの深夜の帰り道に、一緒に自宅までを歩く遥か遠くの友、そんな道連れであって欲しいと思う。ここで「I Wished On The Moon」と歌っているパティ・ペイジと、ぼくの気分はそんなに変わらない気もするのだ。


 1936年に書かれ、ビング・クロスビーやビリー・ホリディによって歌われ知られるようになったというから、パティ・ペイジがこうして採り上げた1950年前後には、もうスタンダードだったのだろう。
 「月に行けたなら」と歌ってはいるけれど、それにしてもまさか実際に行くことが出来ると思って歌われているとは思えない。
 それが歌の面白いところだと思う僕は、こうしてパソコンや携帯で月の表面を探索できるようになってみて、今後に「月」にまつわる歌が登場するのかどうか、むしろそちらに関心を向けてしまう。


 もちろんパティ・ペイジが歌う月と星と貴方をめぐるこの歌の味わいは、素晴らしい。この素晴らしさを感じることが出来なくなることの方が、もったいないと思ってしまうのである。(大江田 信)


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