Robert Kraft And The Ivory Coast ロバート・クラフト / Moodswing

Hi-Fi-Record2006-08-26

 ギタリストが自身の音楽性をジャケット写真で表現しようとすると、ギターの機種だとか、ギターの抱え方とか、髪型を含めた洋服のファッションとか、そうしたことを用いることになるのだろう。ライティング効果たっぷり、ハレーションいっぱいのステージ写真を用いたヘビメタ・ギタリストのケースなど、ジャケットと中身の音楽とがシンクロしていることを思い出してみると、わかりやすかもしれない。
 
 
 それがピアニストの場合はどうなるのだろう、と考える。エレピが映っていればフュージョンっぽいのかなと想像したりするのだろうし、シンセサイザーだったりすると、もっとわかりやすい。楽器の音色が音楽そのものを想像させる。それでは、生ピアノを演奏するアーチストは、自身の音楽をどうやってジャケットに映し込むのだろうか。



 ロックの時代に育ったリズム感をふんだんに盛り込んだ歌うジャズピアノSSWのロバート・クラフトは、キーボードに似せたオブジェを持ってニッコリと微笑む姿で写真に収まった。ロッキンなビートが響くスタジオ録音の演奏と、日常の演奏スタイルを想像させる通例のジャズ・トリオによるライヴ音源(スキャットが素晴らしい)とを収めた本作品でデビュー。ジャケット写真に、自身が向かい行く音楽の新しさを表現したかったのだろう。
 
 
 その通り、新しい感覚のジャズが聞こえる。素晴らしいきらめきが、ちりばめられている。その意気を買いたい。
 にもかかわらず、旧来からのジャズの価値観に馴染んだ聴衆には、残念ながら彼の音楽は評価されなかった。この後に、ロバート・クラフトAORサウンドに進む。(大江田)